Story sixth
静まりし二つの羽根 6
アンタレスの鍵の爪痕
歩み出すイエムを感じながらレクは逆さ次元城の機織りの幾何学を思い出した。
トップから5角に広がり、その伸縮を示す力のベクトルが思い出される。
もしも、南への壁の二本のルートがその毒消しの作用だとするなら、そのかかった、爪の深さで北への進捗度が変わるに違いない。
るーぷによってまきあげられたかの様に逆さ次元城は速さを増していく。
赤き蠍の尾が、北のすみに届く頃、突如小さく消えた逆さ次元城が再び世界の海里を越えその反動で拡大していく。
西へのルートが開かれてるうちにとびこまねば、このクローズトされた扉は二度と開く事はないだろう。
とうぜん、もう一人の自分も救えない事になる。
レクのダイスは星と剣。
かぎづめの痕跡から入った一言がイエムの頭に木霊する。
そこは処刑場までのステップは13
この毒のつめあとが、どこか、もう一人のイエムをテキーラのように痛みを和らげていた。
西口に刻まれた古い経路の途中のサボテンが、花を咲かせている。
夕暮れまでにウラカベを探しとらないと、6線、均衡のルートは解けない。
ブルーにゆれる傘が、グレーのきりさめに揺れる。
オープニングラインを探し出さなきゃ。
時刻は15時をまわり27分を時計の針が差し示した。蠍の尻尾が毒を含ますものとするなら、何かそれは代償を伴う故だろう。
もしも、西を出たラインが、北へ道を反らすなら、その反動で六の均衡、5の均衡はくずれ毒は少し解けるにちがいなかっただろう。。
もろくも、北への尻尾のループは南に下り、西へ出たイエムは降りに向かった。
次元間に連なるオープニングラインが、一向に現れない。
どこに裏世界への入り口はあるというのか
もう一人の自分が別の世界で生きているなどという事があり得るのか?
少しイエムの覇気が、弱まるころに突如、蠍の記憶がよぎる。
その境界を踏む前の丸小橋、そして瓦の黒、黄色い鳥。
それを追い求めてイエムは走る。
そして
堀とタイルを越え、イエムは、家に飛び込んだ。
古くはキリスト教は、道を行く導き、仏教はその道を育てる母だという。
イエムはクローズドされた方の世界に飛び込めるのか?
つづく